研究概要 |
平成4年度は,前年度に引き続き,discordant異種移植における超急性拒絶反応の制御を目的として,異種細胞上にヒト補体制御因子を取り込ませ,ヒト補体に対する制御効果を検討した。また,超急性拒絶反応の起こらない異種移植モデルにおける異種抗体および細胞性免疫応答の役割について検討した。 1,ヒト補体制御因子による超急性拒絶反応の抑制効果について (方法)ヒト補体制御因子(CD55及びCD59)をモルモット,羊,およびブタの赤血球に取り込ませ,ヒト補体の抑制の程度を調べた。 (結果および考察)ブタおよび羊では,CD55がC3stepでCD59に比し有効に補体を抑制した。またブタおよび羊では自然抗体を除くとalternative pathwayの影響は少ないと考えられた。 2,ラット,マウス間異種移植における拒絶反応機構について (方法)ラット、マウス間皮膚移植モデルにおいて,抗CD4,抗CD8抗体,および抗体産生の特異的抑制効果を持つ,抗補体レセプター抗体の投与効果を検討した。 (結果および考察)抗補体レセプター抗体は抗体産生を抑制したが,グラフトの生着延長は得られなかった。抗CD8抗体投与によってもグラフトは同様に拒絶された。しかし,抗CD4抗体投与群では,有意のグラフト生着延長が得られ,この効果はCD4陽性T細胞のヘルパー機能,およびエフェクター機能の両者の抑制によるものであることが明かとなった。すなわちラット,マウス間皮膚移植モデルにおいてはCD4陽性T細胞が,重要な役割をはたしていると考えられた。
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