研究分担者 |
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 分子生物学, 助教授 (90159129)
小柳 清光 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (00134958)
山田 光則 新潟大学, 脳研究所, 助手 (30240039)
高橋 均 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (90206839)
武田 茂樹 新潟大学, 脳研究所, 助教授 (90134957)
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研究概要 |
我々は本課題によって,成熟正常脳内の病巣修復に対し,第2の胎児脳での修復はアストロサイトの反応がないかごく弱い特異な修復過程を辿ること,第3に成熟脳でも肝機能障害のようにアストロサイト自体が障害され,修復過程が全く異なる3つの過程の存在を明らかにした。 即ちまず,アストロサイトの機能マーカー神経成長因子(NGF)の消長を正常成熟脳内の病巣と正常な胎児脳発育に伴なう変動,そして胎児脳病変の経時的変動とを夫々明らかにした。即ち正常成熟脳内ではアストロサイトが分裂する受傷後4日頃から急激に上昇し,10日頃ピークに達し,2週頃正常値に戻る。病巣修復に果たすNGFの重要性が明らかになった。正常脳の発育では,グリアの分化が生ずる生後1週頃から急激に上昇,2〜4週,即ち脳形成期に高値に示し,1ヵ月位から通常値に戻る。これに対し,アストロサイトの分化が生ずる以前に与えられた脳病変ではその後NGFの上昇は殆どみられない。即ち胎児脳病変では反応するアストロサイトが殆どないことと軌を一にした値を辿ることを認めた。 第3年度は神経学最大の問題である脳容積増大に伴う頭蓋内圧亢進の視点から修復過程を検討した。その結果,成熟正常脳病変ではまずアストロサイトの腫大による腫脹とその後の細胞外液貯留を伴う脳浮腫で強い容積増大を示す。これに対し,肝機能障害におけるアンモニア増多の場合は,他疾患と逆にまずアストロサイトが急激に腫脹し死滅する。このため全脳に極めて高度な脳腫脹を生ずる特異性が明らかとなった。そして胎児脳における病変は腫脹するアストロサイト自体がなお分化していないことと,変性した神経芽細胞はその周囲に元来存在する細胞外液中のマクロファージによって除去されるため,全く脳容積増大も頭蓋内圧亢進も生じていないことが初めて指摘された。
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