研究概要 |
中枢神経機能障害を評価するために近赤外線吸収装置を応用して,測定分析を行った。半導体レ-ザ-による6波長の近赤外線を光電子増幅管によるフォトカウント法による基礎実験を行った。今回はイヌで完全脳虚血モデルを作成し,この虚血時間を5分から12分と延長させて脳内酸素環境,脳血液量の変動を追った。左開胸により大動脈,上下大静脈にそれぞれテ-プをかけ全身を虚血にする方法によった。このテ-プを締めて血圧が零になるのを確認することで脳虚血が完全になるのを確かめた。 近赤外線吸収装置には6波長を採用することでHb,Hbo_2及びチトクロ-ム,オキシダ-ゼを分離し測定することが可能になった。頭蓋外部の皮膚に近赤外線吸収プロ-ベを装置し,脳組織環境の酸素化の度合,脳血液量が非侵襲的且つ連続的に測定できた。 脳虚血により脳内Hb濃度が低下し,還元Hb濃度が上昇し,これにやや遅れてチトクロ-ム・オキシダ-ゼは還元型に移行した。脳血液量も虚血の進行につれて減少した。再灌流により脳血液量の減少した状態が過剰灌流状態になり,Hbの濃度は減少し酸化Hb濃度は上昇してきた。これは共にチトクロ-ム・オキシダ-ゼは還元型から酸化型に移行してきた。 対照時よりもかえって酸化型の割合が増したが,これは直後の反応で,次第にチトクロ-ム・オキシダ-ゼは対照値よりも還元型が増加してきた。出血性ショックでの反応も同じパラメ-タ-で検討したが,この反応の度合は軽度であった。 脳組織の変化がin situで非侵襲時に測定できることが確立できたので今後はショック,各種麻酔時での反応を更に動物実験で実験した上で臨床に応用しようと計画を立てている。
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