研究概要 |
【目的】臍帯血は,TEGで凝固亢進の像を示すにもかヽわらず,個々の凝固因子は減少しているという極めて矛盾した状態にある。目的の第一は,トロンビンに特に鋭敏に反応する胎児フィブリノ-ゲンの臍帯血中の存否の確認であり、第二にはトロンビンに関与する物質ATーIIIとTAT(トロンビンATIII複合体)などの動態を追求することにある。 【方法】1)胎児フィブリノ-ゲンの存否を検討するため,臍帯血20例、肝癌患者10例、正常成人10例につき精製フィブリノ-ゲン作成ののち(1)Thrombin時間(2)Fibrin monomer Polymerization(3)7%SDS電気泳動を行なった。2)分娩時臍帯血48例をApgar≦7(12例)Apgar≧8(36例)にわけて(1)ATIII(2)TAT(3)γーγ.Dimer(4)Fibrinogen(5)血小板数(6)FDPを測定,新生児DICスコアと関連をみた. 【成績】1)(1)Thrombin時間では,正常成人平均24.0秒に対し肝癌群で37.1±5.2(秒),臍帯血24.8±5.5と延長を示し(2)Fibrin monomerのPolymerizationではThrombinにより肝癌群0.16±0.15(秒)臍帯血では,0.11±0.08と正常の0.28±0.50よりはるかに低下した。(3)電気泳動法に於ては、臍帯血と成人値に差はなかった。2)仮死群Apgar Score≦7群で,TATは8.6±2.4ng/ml(正常2.2±0.74)と有意に増加し,γーγ Dimer5.0±1.6ng/ml(正常1.0±0.8ng/ml)FDP28.0±6.4μg/mlも同じ傾向を示した。 【結論】1)トロンビンに鋭敏に反応し,トロンビンとATIIIの結合物であるTATが、新生児のDICスコアと最もよく相関することから,DICの早期診断にかなり有用であると考えられる。 2)臍帯血は、器質的にはThrombin時間の延長という点で、機能的にはポリマ-化の低下という点で、肝癌患者に酷似しており、癌胎児関連抗原の可能性の一端を示唆するものと考えられる。
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