研究概要 |
【目的】『ヒトは血管とともに老いる』という言葉があるが,加齢と血液凝固との関係についてはよく知られていない。 周知のごとく,婦人の性周期には,卵胞期と黄体期があり,このうち黄体期が強調されたホルモン環境を示すものが妊娠である。 さらに高齢婦人では,閉経にともない,卵巣ホルモンの分泌が低下し子宮内膜は萎縮して,周期的変化は生じにくくなる。 今回の目的は,婦人のライフサイクル,なかんづく高齢婦人にあらわれる凝固〜線溶系の変化を検索することにある。 【方法】 1)正常の月経周期をもつ非妊娠婦人19名2)正常妊娠11名3)72〜84才の高齢婦人14名を対象とした。1)の非妊娠については,BBTによって黄体期と卵胞期にわけた。以上の1)〜3)群の対象となった被験者につき,次の諸項目を検索した。(1)ADP凝集能(2)Collagen凝集能(3)Thrombostat 400(血栓の形成過程を描く装置)による各パラメーターの追求を行った。 【成績】 1)性周期による変化は,非妊娠人の黄体期および卵胞期の間に有意の差はみられなかった。たゞし注目すべきことは,卵胞期で凝集能,二次凝集出現頻度が経経期に比し5分後凝集能の増大をみた。これはエストロゲン値上昇を意味しているものと思われる。 2)高齢婦人と非妊娠の比較では,ADP凝集能で非妊娠69.1±13.7(%)に対し,高齢婦人38.7±19.2(%)コラーゲン凝集能で非妊娠73.8±10.6(%)に対し高齢婦人29.6±25.6(%)と高齢婦人でいずれも低値を示した。 3)Thrombostat 4000によるV_2の測定では,非妊婦人の104.0±20.3(秒)に比し,高齢婦人は146.2±66.5と著明に延長しエストロゲンの影響を示唆した。
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