研究概要 |
我々は名古屋大学とその関連病院よりなる東海卵巣腫瘍研究会を組織して、現在CAP(CPA,ADR,CDDP)とPVB(CDDP,VLB,BLM)の効果を比較中である。各々、導入化学療法として6コ-ス、維持療法として2年間、3ケ月ごとに繰り返す治療を施行している。また6ケ月から1年の間にsecond look operationを施行し残存腫瘍は積極的に摘出している。現在までに解析し得た143例中、CAP群80例、PVB群50例において各々の寛解率は66%と82%でありPVB群でやや有効であった。寛解に至った94例中42例が再発しており、そのうち10例はリンパ節だけに腫瘍を認めた。このことは初回手術時のリンパ節郭清の必要性を示唆している。今後更に症例を増やして慎重に検討する必要があろう。 病理組織型ではserous70,mucinous19,endometrioid23,clear29,unclassified2例であった。寛解後の再発率を見るとserous65%(31/45),mucinous6.7%(1/15),endometrioid5%(1/20),clear47%(9/19),unclassified0%(0/2)であった。このことからmucinousとendometrioidでは、まず寛解に持ち込むことが、serousとclearでは、寛解後の再発をいかに防ぐかが重要である。 寛解症例においては、引き続いて維持療法が平均5.7コ-ス施行されているが、9コ-ス以上の施行例でも50%(3/6)が再発している。維持療法そのものが無効なのか、各種制癌剤に対する耐性獲得によるものなのか現在検討中である。 CDDPに対する耐性機構を我々が樹立した卵巣癌由来耐性細胞株で基礎的研究を進めている。その結果耐性株では親株に比してCDDPの細胞内濃度が有意に低下していた。更に制癌剤の解毒に関与しているGSTーπのmーRNAが約3倍に増大していた。現在更に詳細な耐性機構の解明を急ぐと共に耐性克服への基礎的実験を行っている。
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