研究概要 |
卵巣癌の治療は初回手術療法とその後の化学療法を施行するのが一般的である。1986年より1989年2月までの188例の卵巣癌患者を詳細に解析した。臨床的寛解基準を設定し、この基準を満たす症例がどのような因子によるかを多変量解析にて検討した。進行期、残存腫瘍最大径及びPVB(CDDP、vinblastin、bleomycin)療法の関与が明かとなった。更に、寛解した症例の再発に関与する因子を同様の方法にて解析したところ、PVB療法が有意に再発しにくい因子であるとの結果を得た。以上のような有意に寛解率を高め、更に再発率を低下させるPVB療法の有用性が明かとなった。今後はPVB療法を中心として更に有効な治療法を確立する必要がある。維持化学療法の有効性は今後の長期的な経過観察に基づき確認する方針である。新FIGO分類に従った後腹膜リンパ節廓清の意義は検討中である。旧分類のIa期では0%、IC期では20%であったが、更に症例の集積を待って詳細な解析が必要であると考えられる。当科で樹立した卵巣癌由来細胞株(NOS2)とそのCDDP耐性株(NOS2CR)において、CDDPとその誘導体4種(CBDCA、254S、NK121、DWA2114R)に対する感受性を調べた。CDDP耐性株の交差耐性はCDDP>CBDCA>NK121>254S>DWA2114Rの順であり、DWA2114Rが最もCDDP耐性株に対して有効であり将来の臨床応用が期待される。細胞内のプラチナを原子吸光度計で測定すると,耐性株においては親株のCDDPは29%,CBDCAは63%DWA2114Rは87%であった。即ち感受性試験と細胞内濃度の成績が一致しており、NOS2CRでは細胞膜が耐性に関与していることが明かとなった。この耐性機序を克服する方法を今後追求したい。
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