研究概要 |
現在の標準的卵巣癌の化学療法はCAP療法である。我々は更に有効な化学療法のレジメンの確立のため東海卵巣腫瘍研究会を組織してCAPとPVB療法とのランダマイズスタディーを行った。多変量解析で臨床進行期、残存腫瘍径、明細胞腺癌が負に、PVB療法が正に予後に有意に寄与していた。従って現在はPVBとPP(cisplatin,carboplatin)のランダマイズスタディーを進めている。手術療法ではリンパ節廓清の有効性を検討した結果、残存腫瘍がある時にはリンパ節廓清は生存率に寄与しなかった。しかしながら腫瘍を肉眼的に全て取りきれた場合には初回手術だけでなくsecond operationであってもリンパ節廓清は有効であった。卵巣癌の化学療法の効果を判定する目的で現在多くの施設でsecond look operationが行われているが我々は独自の臨床的寛解基準を設定した。その結果臨床的寛解基準で十分に病理学的寛解基準に匹敵しえることを見い出した。 抗癌剤耐性細胞株を実験的に作成し耐性機序及びその克服法を基礎的に研究した。adriamycin(ADM)耐性の機序としてglutathione-S transferase π(GST-π)とp-glycoproteinの発現増加が関与している事が推測された。benzene sulfonamide誘導体のW-77はADM耐性を著明に克服することができた。cisplatin(CDDP)耐性はGST-πの活性増加と細胞内薬剤量の減少がその機序であると考えられた。DWA2114RがCDDP耐性株に最も有効であり、耐性克服法としてはamphotericin Bが細胞内量を増加させ臨床応用に期待が持たれた。
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