研究概要 |
我々が開発した完全合成無蛋白培地PF86ー1を用いた口腔癌細胞の無蛋白培養系を用い、その培養上清中に分泌された口腔癌の産生する物質についての検索を行った。 ^<45>Caで標識したマウス胎児頭頂骨の骨吸収実験系を用いて、口腔癌の産生する骨吸収促進因子の検索を行った。6種の無蛋白培養系の細胞株の1つCaPFの培養清中に、ILーIα,PTHrP,PDGFAAが存在することを見出した。そして6種の細胞株には、ILーIα,ILーIβ,PTHrP,TGFーα,TGHーβ,PDGFA Chainのいずれか、あるいはすべてのmRNA発現が認められた。また間質構成細胞の1つである血管内皮細胞を標的としてDNA合成能を測定したところ、6種の細胞株のうち、2種の培養上清中に強い抑制活性が認めれら、この活性は血管内皮細胞に特異的であり、線維芽細胞に対して無効果であった。この1つHSCー3PFの培養上清を材料にこの血管内皮細胞増殖抑制因子の精製を試みた。陰イオン交換、ゲル濾過クロストグラフィ-を用いて部分精製した現段階で、SDS PAGEによる分析からこの因子は分子量70Kもしくは90Kの蛋白質と推測できた。現在、脾内免疾法を用いこの因子の単クロ-ン抗体を作製中である。未知の物質である可能性も大きく、今後この因子と抗体を用いて、内皮細胞と癌の相互作用を解明してゆきたいと考えている。 癌遺伝子と口腔癌の臨床的特徴の関連を明らかにするため、癌遺伝子erbBー1,hstー1,intー2について増幅様式をサザンハイブリダイゼ-ション法にて検索した。その結果erbBー1は10株中2株にhstー1,intー2は5株に認められた。しかしその程度はerbBー1の方が明らかに高らかに高かった。また癌発症を考えらる面から、これら癌遺伝子及び癌抑制遺伝子の活性化あるいは不活性化を検索した。ras癌遺伝子の活性化は扁平上皮癌の発症に不可欠でないことを示した。またP53、抑制遺伝子は、細胞株、組織ともに1例を除く全例で構造異常が検出された。
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