研究概要 |
購入した透過反射両用光学顕微鏡を用いて,象牙質ーレジン接合界面の横断面試料を観察し,さらに走査型電子顕微鏡との併用により,接合部の超微細構造が明らかとなった。各構造物のアルゴンイオンに対するエッチングレ-トはそれぞれ異なり,また硬度にも差があることが判明した。これらの構造物のうちで,特に樹脂含浸層については,その形状や内部構造に様々な変化が認められた。すなわち,用いられる接着性レジン材料が異なると,樹脂含浸層の幅や内部構造に差が生じ,このような変化は,レジンの接着強さの成績との間に密接な関連があることが明らかとなった。特に各種の接着性プライマ-を使用することにより,前処理材による象牙質表面の脱灰層におけるコラ-ゲン線維の収縮が抑制されて,脱灰幅とほぼ一致して樹脂含浸層が形成され,その内部のコラ-ゲン線維の密度は,非脱灰象牙質のコラ-ゲン密度と同程度となることが確認された。一方,プライマ-を使用しない場合には,形成される樹脂含浸層の幅は脱灰層よりも小さくなり,内部のコラ-ゲン密度が高くなり,接着強さの低下の一因と考えられる。さらに,被着体となる象牙質の違いも,接合部界面の構造に変化をもたらすことが判明した。すなわち,一般に接着強さの高い,十分に成熟した歯牙における象牙質ではプライマ-を用いなくても脱灰層と一致した樹脂含浸層が形成されるのに対し,幼若な歯牙における象牙質に対しては,脱灰層よりも幅の小さい樹脂含浸層が形成された。このように被着体が異なる場合の接着強さの変化とも,接合界面の構造は密接に関係していることが示唆された。
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