昨今、生活環境中に多種多用な形で存在する金属をアレルゲンとする、皮膚粘疾患が急増しており、マスコミで取り上げられることが多くなった。金属を多用する歯科領域に於ける研究者、医療従業者としては、これに関する詳細な知識と正しい見解を持つベきと考える。しかし、口腔内の歯科用金属による感作については、その発生率も機序にも今だ不明確な点が多い。本研究は、口腔内に金属修復物を有する歯科患者および歯科医師、歯科技工士、歯科衛生士など歯科医療従事者の金属への感作率と口腔内金属との関連性を、補綴治療の既往がなく、金属に接する機会の少ない者と比較し、金属感作の機序の解明を目的として開始した。 本年度は、本研究を始めるにあたり新たに導入した蛍光X線分析装置SEA2001(アプコ(株))の性能の検討を終了した。検出結果は、歯科で使用される金属のうち、アレルゲンとして頻繁に報告されているものほとんど全てにつき、純粋元素を用いて実験を行った。その結果、バルク試料ではEPMAとはぼ同じ検出限界を有し、微量添加金属に対しても、元素の種類によってはEPMよりもよい結果を得られる場合もあることを確認した。また、標点を記したレントゲンフィルムを分析面から高さを変えて設置し、X線を照射して露光させ、X線照射範囲、すなわち分析範囲を3次元的に明らかにした。金属元素を含む有機物の分析では、有機溶媒の影響が明らかに認められたため、化粧品等に使用される代表的な有機溶媒につき、検討し、マイラーカップ内で試料の深さが約2mmあれば測定に十分であると判明した。 歯科医療従業者に関しては、現在出生地、居住地、歯科診療あるいは技工作業等の従事期間年数、アレルギー疾患等の有無、口腔内所見、およびパッチテスト陽性者の口腔内試料分析結果等のデータを集計し、検討を加えている。
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