研究概要 |
SecY優性欠損変異の解析から,細胞質領域C5を中心としたC末端側にSecY活性に重要な部位があることを提唱,優性欠損効果を打ち消すような遺伝子内抑制変異の分離・解析などから他の因子との相互作用に関わる部位がSecYの中央部位のC4からTM7にかけての領域に存在する事を示唆した.相互作用領域にマップされるミスセンス変異secY24はSecEとの相互作用を弱めるものである事を,免疫共沈降,可剰SecY24に対するSecEによる安定化効果の喪失から示した.またSecD,SecF,およびその上流に存在するORF12の過剰発現によりsecY変異株の表現型がpositiveまたはnegativeな影響を受け,ORF12にはSecE同様の過剰のSecY安定化効果および以優性欠損secY変異に対するサプレッション効果があった.優性欠損変異に対するマルチコピーサプレッションの解析により新しい遺伝子ydrの産物がSecYと相互作用を持つ事を示唆した.YdrがSecYと相互作用を持つ事を更に,secY24変異株中でydrの過剰発現が著しい分泌と増殖阻害をもたらすこと,ydrの同時過剰生産により過剰生産SecYが安定化されることから示唆した.塩基配列決定によりYdrが181アミノ酸残基よりなる親水性タンパク質であり,C末端が両親媒性αヘリックスをとり得ること,ゆるやかに膜に結合していることを示した.過剰SecYの迅速な分解により細胞内において安定なSecY複合体の存在量が一定に保たれていることを,SecY-LacZα融合体による競合実験で示した.膜蛋白質の“stop transfer"配列の膜へのアンカリング効率が低下したstd変異株を分離し,変異がftsH遺伝子に起こったものであることを示し,そのATPase結合部位が機能に重要である事,FtsHが蛋白質膜透過自体にも役割を持つ事等を明らかにした.
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