研究概要 |
タンパク質のモジュールの構造と機能を解析することにより、タンパク質の進化におけるモジュールの意義とイントロンの在存理由を解明すると同時に、タンパク質の高次溝造の設計原理の解明に寄与することを目的として、本研究は平成2年度と3年度に行われた。研究の主な部分は平成3年度までに終了したが、成果のとりまとめと公表にさらに1年を必要とした。平成4年度に研究成果の総括ととりまとめを行った。得られた研究成果の概要は以下の通りである。 本研究の対象としたタンパク質は、RNA分解酵素の一種バルナーゼRNAポリメラーゼ、原核生物由来の転写制御因子、葉緑体のリボ核タンパク質などである。バルナーゼは6個のモジュールにわけられた。水素結合はモジュールの内部に集中して存在し、モジュール間にはほとんど見られなかった。各モジュールを安定化するように水素結合が設計されていることが分かった。各モジュールを化学合成した。6個のモジュールのうち、3個のモジュール(M2,M3,M6)がRNA分解活性を示した。これはモジュールが機能を持つことを明らかにした最初の例であり、モジュールが原始的な触媒として、進化のプロセスで機能した可能性を明白にした。単独モジュールが溶液中で安定なコンフォメーションをとるかどうかを明らかにするために、モジュールM2、M3の溶液中構造を2次元NMRとdistance geometry法により決定した。切り離されたモジュールが天然のバルナーゼの2次構造と同様な構造をつくる傾向が明らかになった。さらに、バルナーゼ様領域がRNAポリメラーゼIIに存在することを発見し、この領域がRNA分解活性をもつことを予測した。転写制御因子の中に、ヘリックス・ターン・ヘリックス・モジュールが2または3回繰り返していることも明らかにした。以上のように当初の計画を上回る成果を得ることができた。
|