本研究では、まず第1に視覚障害者の歩行の特性を把握するために歩行中の筋活動の記録と歩行姿勢の画像解析を行なった。被検者は全盲の男性10名(年齢17歳〜22歳)、中途失明の男性10名(年齢39歳〜51歳)、および晴眼男性10名(年齢21歳〜27歳)である。その結果、晴眼者や中途失明者と比較して全盲者は、頭部を有意に屈曲した歩行姿勢で歩いていることが分かった。また、全盲者は踵接地時の足関節の背屈が有意に小さく、足先離地時には有意に底屈が小さくなることが分かった。晴眼者と中途失明者、全盲者の歩幅率はそれぞれ41%、39%、35%であった。ストライド率は、晴眼者が83%、中途失明者が77%、全盲者が67%であった。1歩行周期の立脚期と遊脚期についてみると、晴眼者は立脚期が58%、遊脚期が42%であった。中途失明者は立脚期が61%、遊脚期が39%であった。全盲者は立脚期が70%、遊脚期が30%であった。 第2に白杖を用いて長さを弁別する課題を全盲者1名と晴眼者6名に実施した。被検者はいずれも成人である。標準刺激を20cmとし、1cmおきに長さを変化させ、長短5種類の刺激を用意した。その結果、白杖を用いると長さに対する弁別いき値(Threshold)は、1.5〜2.0cmの範囲にあることが分かった。
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