本研究では、まず視覚障害者の歩行の特徴を明らかにし、次に歩行指導のあり方と問題点について整理することにした。視覚障害者の歩行の特徴として次の点が明らかになった。1)踵の接地時と離地時において歩行中の頭部の屈曲角度は、視覚障害者が有意に屈曲していた。2)踵の接地時において足関節の角度は、視覚障害者が有意に大きい角度を示した。3)踵の離地時において足関節角度は、視覚障害者が有意に小さい角度を示した。4)腰と膝の角度においては晴眼者と視覚障害者の間に有意差は見られなかった。5)歩行中の筋活動を見ると視覚障害者の前脛骨筋と腓腹筋の活動は弱く、活発な活動は観察されなかった。6)視覚障害者の歩行は末熟な歩行パタ-ンのように見えるが、危険から身を守り、安全に歩行するために獲得されたいわゆる、Adapted Gaitであると考えられる。次に、視覚障害者が歩行に際して用いる白杖は、道路上のさまざまな対象を探索し、それらの特性を視覚障害者に伝えてくれる。視覚障害者は、白杖を通して得られる情報で対象の特性をどの程度正確に把握しているのか調べてみた。白杖を用いて対象の長さや高さをどれくらい正確に知ることができるか、実験してみた。触覚、及び固有受容感覚能力は、長さは約2cm、高さは約1.5cmの差異を検出できることが分かった。白杖を巧みに動かして、対象を走査し、対象の特性を知覚する能力は、視覚障害者の白杖歩行能力を高めるために必須である。白杖の素材、白杖先端の直径、白杖の長さ、白杖走査の方法など検討事項は多い。これらの実験の外に、盲学校児童生徒の歩行指導を行ない、その問題点と課題をまとめた。
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