私たちは、この研究において以下の二つの調査を実施した。すなわち、(1)「水子供養」実施寺院および「水子供養」を実施している心霊家を対象にしたアンケ-ト調査、(2)京都市内全寺院を対象にしたハガキによるアンケ-ト調査、である。 調査でえられた知見をまとめると以下のようである。 (1)昭和40年以前から「水子供養」を行っていたとする寺院は全体の2割強にすぎず、大半はこの20〜30年のうちに始めた寺院である。 (2)「水子供養」を希望する人の数はほぼ横ばいとする寺院が半数近くあった。この慣行が今の日本社会においてかなり定着してきていることがわかる。 (3)一回の供養料が1000円から2、3万円程度の寺院が8割くらいあり、月平均供養回数のデ-タ(10人以内とする寺院が6割)と併せると、寺院のビジネスとしてはかなり小規模なもののようである。 (4)寺院側の観察によれば、「水子供養」依頼者の像は次のようなものである。年齢は20代の人が多く、男女のカップルまたは女性一人でやってくる。自分(たち)が中絶その他で「水子」をつくってしまった人が大半である。彼らは、罪の意識から、あるいは水子のたたりを恐れて「水子供養」に来るようである。彼らの中には、さまざまな悩みごとの相談をしていく人もいる。 (5)京都市内の全寺院を対象にした調査(調査票回収率40.9%)では、「水子供養」を行っている寺院は全体の35%、宗派による偏りはほとんどないことが明らかになった。
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