研究課題/領域番号 |
02451024
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
徳永 恂 大阪大学, 人間科学部, 教授 (70027952)
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研究分担者 |
宮田 敦子 大阪大学, 人間科学部, 教務職員 (90157652)
杉山 光信 東京大学, 新聞研究所 (70092020)
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キーワード | 自律性 / アウラ / 文化産業 / 近代(モデルネ) / コミュニケ-ション / 啓蒙 |
研究概要 |
本年度は、主として芸術社会学の方法的基礎づけを、歴史的な反省をつうじて行うことを目ざし、ルカ-チらの反映論的美学に対して、ベンヤミン、アドルノら、いわゆるフランクフルト学派と呼ばれる人々の立場を、それと対照させて鮮明にすることに重点を置いた。マス・カルチャ-に対する最初の批判的理論とも言うべき、「文化産業」論を含む『啓蒙の弁証法』の翻訳が先ず82年はじめに出版されたし、ズ-ルカムプ社からのベンヤミン全集が完結して、多くの未定稿が参照できるようになり、この問題について、第一資料に基いてアプロ-チすることができるようになった。前記『啓蒙の弁証法』の訳出以後は、テ-マをベンヤミンにしぼり、とりわけ「歴史哲学テ-ゼ」の解釈をつうじて、ベンヤミンの歴史哲学と言語哲学の関連について、立ち入った究明が行われた。その成果は、平成2年11月の東北哲学会で発表され、また平成3年5月の日本哲学会で発表されることになっている。その場合の本研究の成果としては、はじめて時間論的基礎の上で、ベンヤミン独自の歴史意識が究明され、アレゴリ-解釈という彼固有の方法が、たんに狭い個別科学の枠内に止まらず、広い哲学的な射程の下で、大きな意味を持つことが解明されたことがあげられよう。今後さらに、芸術作品の社会的規定性とともに、その美的自律性を要求するベンヤミン・アドルノの美学の、個別作品、ジャンルに即した展開、およびハバ-マスの「コミュニケ-ション論」的美学への発展過程とその意義、「モデルネ」への評価といった問題が、これまでの成果に立って、引き続き究明されることになる。
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