研究概要 |
生活者の側からはノ-マライゼ-ション思想,政策面からは高齢化社会への対応,さらに理論面からは地域福祉,これらがあいまって近年においては生活の場としての地域が重視されるようになってきている。それにはさまざまなハンディキャップを受けている人びとの在宅生活を可能にするための社会資源の整備,開発が必要となる。一方,社会福祉施設を中心とした従来型の社会資源あるいはサ-ビス供給システムだけでなく,さまざまの多様な方法が提起され,既に幾つかは実践段階に入っている。例えば,シルバ-ビジネスの振興に代表される企業型福祉の対応,福祉公社や社会福祉協議会の事業主体化にみられる第三セクタ-方式,さらには生協システムや農協システムにおける福祉サ-ビスや純粋なボランティア団体の活動などがある。このような状況下において,非常に大きな期待がかけられているのが地域住民による組織的参加である。これは,ただ単にボランティア団体や住民の相互扶助にとどまらず,制度化された地域福祉サ-ビスへの組み込みといった形による推進もある。 以上のような理論的枠組によって,平成2年度における研究内容は平成3年度の本調査に向けての準備を行なった。実施した内容は,住民組織に関する既存の調査研究の収集および整理,調査内容の検討などである。現在のところ,明らかになったことは,既存の調査研究と本研究の意図するところとの間には相当の開きがあることである。本研究においては,地域の住民組織による福祉力を総合的,計量的に測定するところにあるが,どちらかといえば既存の研究は歴史的なもの,定性分析的なものが多く,地域における総合的な福祉力に関するものやそれに基づいた地域福祉実践のモデル研究は少なく,しかも総合的な把握が明確ではないようであった。
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