第1年度(平成2年度)には、まず、各種のサーベイ・データの時系列的再分析を行い、有権者の政治関与(政治関心などの心理的関わり)と政治参加(投票参加、選挙運動への参加)の変化を見た。その結果明らかになったことは、女性有権者の政治関与の増大であり、とくに、60歳以上の実年後期と老年グループの女性における政治関与の増加が顕著であることである。さくに、平成元年7月の第15回参議院議員通常では、女性立候補の増加が刺激となり、女性の政治関与も顕著に増加し、中年や実年前期では男女差が消滅し、また、実年後期や老年でも、男女差が縮少したことがはっきり見られた。第2年度(平成3年度)では、衆議院議員公設祕書にたいするアンケート調査を行い、選挙区の変動の筆頭として、女性有権者の活発化が筆頭に挙げられているというデータを得た。現代日本社会における社会構造の変動として、最大のものは、性役割の規定や規範の変化であることが、ここから結論された。現在行われている政治改革論議では、この点への対応が全く欠落しているのである。衆議院議員公設祕書にたいするアンケート調査では、私設祕書を含めた祕書総数推定についてのデータ、公設祕書の職務配分についてのデータなども得ることができ、アメリカ連邦議会の議員のパーソナル・スタッフの職務との比較も行った。平成5年度予算に具体化した「政策祕書」設置についても、それが「政治改革」の一環であるとはいえるとの判断を引出した。「社会構造と政治改革」というテーマでの残された問題は、マス・メディアの発達のインパクトの分析であり、それは今後の課題としたい。
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