本年度については、これまでの研究の集大成に焦点をあててきた。そのために、(1)京都市の番組小学校の第2次大戦直後における再編成の経緯及び京都市のまち割りと通学区域編成との関連の研究、(2)伊勢市の市心部の小学校の通学区域の変遷の研究、(3)本研究をとりまとめるための理論的側面の研究、(4)これまでの研究のとりまとめ、の4点が課題となってきた。 (1)に関しては、第2次大戦直後の時期に新制学制の発足に伴う大がかりな学校再編が行われ、特に新制中学校の整備に伴って、番組小学校の一部が廃止された経緯が明らかになった。また、京都市のまち割りと通学区域との関連については、資料収集に重点が置かれた。 (2)に関しては、伊勢市の市心部の小学校が江戸時代にまでその起源を遡る、旧町に通学区域の地域的基礎を持つことが明らかになった。 (3)に関しては、学区に関する先行研究のレビュ-が行われ、明治期の当初の学区概念(学校設置主体・学校設置区域・通学区域)のうち、機能的潜在的には学校設置区域としての観念が現行通学区域の地域的基礎になっている、という理論仮説を導き出した。 (4)に関しては、研究費の交付を受けた2年間の成果のとりまとめのために、報告書の作成が行われた。 小学校通学区域の存在類型は都市計画の軸と地域組織の軸とをクロスさせ、4類型(旧守型、適応型、誘導型、革新型)を取り出すことができる。今後さらに、通学区域の機能面の研究、比較文化的研究を進めることが課題である。
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