研究課題/領域番号 |
02451044
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文化人類学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉山 晃一 東北大学, 文学部・日本文化研究施設, 教授 (70004041)
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研究分担者 |
吉田 忠 東北大学, 文学部・日本文化研究施設, 教授 (60004058)
上妻 精 東北大学, 文学部, 教授 (10054298)
佐藤 勉 東北大学, 文学部, 教授 (10004037)
塚本 啓祥 東北大学, 文学部, 教授 (30062772)
中嶋 隆蔵 東北大学, 文学部, 教授 (10004061)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1992
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キーワード | 老人の社会的地位 / 中国、韓国、日本の対比研究 / 郷鎮企業 / 敬老院 / 儒教的孝悌の理念 / 両班 / 孝子顕賞 / 老人扶養 |
研究概要 |
本研究の分担研究の多くが老人の社会的地位の問題に集中する結果となった。従ってここでは中国、韓国、日本の老人の地位について対比的に検討する。(1)中国河北省の農村での近代と現代における調査によれば、一貫して老人扶養の基本的単位は息子を家長とする個別家族である。(今日郷鎮企業の発達した地域では敬老院と呼ばれる身よりなき老人の収容施設が開設さけているが)息子による扶養の基礎は伝統的な儒教的孝悌の理念である。台湾では政府自身儒教的敬老思想を支援している。ここでは老人は息子達が均等分担でまわり持ちで世話している。旧中国では漢代以降一貫して論語が中心的古典であり指導者の社会的指針であったが、それが今日も生きているのである。但し、大陸での一人子政策、台湾での息子達の海外発展は老いた親達の地位を脅かしている。(2)韓国の南部一農村での調査によれば、家族・村落双方において老人尊重の慣行が守られているが、その基礎は儒教精神の担い手たる両班が李朝以来当地の中核的住民だからである。(3)現代日本では、耕地の乏しい農村では若い人々は老人を残して他出し勝ちである。種類を異にする宮城・長野・愛知の3つの農村((1)兼業農村、(2)工業導入農村、(3)委託農業農村)での調査によれば、(2)においては老若共に働いていたが、(1)、(3)においては老人は寂しい状態におかれていた。日本では中世以来老人尊重の観念は認められるが時代的変遷が有る。中世では老人は村の諚の番人として尊敬され神聖視さえした。近世の開発ラッシュの中では村落生活が変貌し、老人は指導者ではなくなり扶養の対象へと遷移した。領主は領民に対し親として臨み、老人扶養の制度をし、孝子の顕賞を行った。近代には領主の立場が天皇に移った。但し扶養の主体は家と地域共同体へと制限されて行った。老人の地位が中国い違い、社会的・経済的状況により変動するのは、儒教的伝統の希薄のためであろう。
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