研究概要 |
わが国におけるインド不可触民制の研究は緒についたばかりである。新しい研究分野であるため、資料の所在さえはっきりしないものが多い。したがって本研究は,この分野の基礎的文献の調査と、文献の蒐集に力を入れた。調査・蒐集の中心はアンベ-ドカルと新仏教運動に関係するものとなるが、さらに視野を広げ、カ-スト制度および不可触民制一般に関係する資料の調査・蒐集も可能なかぎり行った。本年度は、研究分担者の一人である石田英明と、研究協力者である岡嵜佐代子が、インド(カルカッタ,ボンベイ,デリ-)において図書蒐集に努め、大きな成果をあげた。本研究の第2の活動は、国内の諸機関に所蔵された資料の調査と,諸機関におけるインド被差別民との交流の調査である。本年度は、東京にある諸機関のほかに,福岡部落解放研究所、岡山部落解放研究所、大阪部落解放研究所を訪れたほか、熊本、長野、京都、大阪、名古屋、奈良で活動中の研究者を訪れ、情報交換を行った。また平成3年1月〜3月にインド仏教徒調査と従事するフイッツジエラルド氏(南山大学講師)とは綿密な研究上の打合せを行った。また、不可触民制,カ-スト制度を研究するグル-プの活動に参加した。とくに東京の不可触民制研究会(代表、小谷注之都立大学助教授)との連携を強め,研究会に出席し、情報の交換を行った。個別的研究においては,本研究課題と直接関係する成果はまだあがっていない。しかし本研究をカ-スト制度史研究の一環として位置づけるならば,本年度においてかなりの成果があげられたと言ってよかろう。
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