研究概要 |
わが国におけるインド不可触民差別の研究は緒についたばかりである。新しい研究分野であるため、資料の所存さえわからないものが多い。したがって本研究は、この分野の基礎的文献の調査と,文献の蒐集に力を入れた。調査・蒐集の中心はアンベ-ドカルと新仏教運動に関係するものであるが,さらに視野を広げ,カ-スト制度および不可触民制一般に関係する資料の調査・蒐集も可能な限り行った。本年度に購入した図書は300冊,前年度購入のものと合わせて840冊を蒐集することができた。本年度においては、これらの図書の分類・整理を行い,国学院大学文学部東洋史研究室に既に所蔵されている図書を加えた約900冊の分類目録を作成した。その目録は報告書の中に収められている。蒐集図書は上記の研究室に常置し,学外の研究者の利用にも供する予定である。本研究のもう一つの目的は,インドの被差別民と交流をもっているわが国の諸団体の活動を調査することである。そうした諸団体の中では部落解放組織,仏教団体,キリスト教団体などが目立つが,活動の実態はあまり知られていない。本研究グル-プは,それらの組織・団体を訪問し,情報の交換を行った。また本研究の分担者は,学外におけるカ-スト制度・不可触民制の研究グル-プとの交流に努めた。とくに東京の不可触民制研究会(代表,小谷汪之都立大学教授)との連携を強め、春(東京外国語大学)と秋(名古屋大学)の研究集会に出席し情報の交換を行った。なお,蒐集図書のうちアンベ-ドカル著作集の一部が研究代表者山崎元一によって翻訳されつつある(明石書店より平成4年秋に刊行予定)。個別研究においては、本研究課題と直接関係する成果はまだ上っていないが,本研究をインド社会史研究の一隈として位置づけるならば,かなりの成果を上げ得たと言えるであろう。
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