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今年度は、主として資料収集に力を注いだ。計画書に記した宮内庁書陵部蔵本の調査は、来年度の継続申請書にも記した通り、自由な閲覧が許可されなくなった。巻一だけの、しかも一日の閲覧は辛うじて許されたが、本書は白点の剥落したその跡を見なければならず、調査はほんの一部に終った。カラ-写真も役に立たない。確かに閲覧すればそれだけ書物の劣化は避けられない。閲覧の制限も一面やむを得ない。種々の条件を総合して判断して、方針を転換し、同じ労力と時間で、一層の成果を上げられる対象の調査研究に勢力を注ぐ事とし、宮内庁本については今後の光学的技術の向上に期待する事とした。
妙一記念館本仮名書き法華経と佼成本、更に、瑞光寺本との比較研究が第一着手である。この中で、佼成図書館本八帖本が摩尼園蔵版本と同版であることが判明した。また、天理図書館蔵本にも摩尼園蔵版本の写しがあることが知られた。日光天海蔵の法華経の調査については、多くの方々の助力により、高麗版法華経に対する中世の加点本を調査することができ、撮影も終へた。伝光明皇后筆本、伝聖徳太子筆文は共に、中世の訓読を伝へるもので貴重である。熊本本妙寺本は音読による仮名書き本であり、別の意味で貴重である。防府天満宮所蔵本は、巻一二に平安朝古点の面影を残す朱点が施され、また、全体に室町期の墨訓点があり、これも、中世の資料として重要である。広島大学で策撮影済みのフィルムにより焼付け予定。此の外、大谷大学図書館、国会図書館等で資料を調査した。 一方、鎌倉時代写・加点の尊能僧正手沢本8巻を入手した。また、江戸後期頃写の仮名書き本8冊を入手した。いづれも、比較の資料として有益である。
真字本法華経本文の電算化を入力可能部分につき完成した。以後、本研究は若干の資料を補充し、訓読史の要点について、研究をすすめる。
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