研究課題/領域番号 |
02451060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 康也 東京大学, 教養学部, 教授 (20012297)
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研究分担者 |
丹治 愛 東京大学, 教養学部, 助教授 (90133686)
高村 忠明 東京大学, 教養学部, 助教授 (10092256)
成田 篤彦 東京大学, 教養学部, 教授 (30017363)
出渕 博 東京大学, 教養学部, 教授 (40016621)
山内 久明 東京大学, 教養学部, 教授 (30108203)
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キーワード | 表象 / シェイクスピア / 受容 / 近代 / テクスト / 文化 / 普遍性 / 特殊性 |
研究概要 |
シェイクスピアの作品の解釈と受容における文化表象の機能について、さまざまな角度から考察を進めた結果は、おもに以下の三点に絞って言うことができる。(1)シェイクスピア当時は未だ表象に確定していなかった概念である「近代」は、のちの受容において次第に表象が固定され強調されてゆくに至る。たとえば、『ジュリアス・シ-ザ-』における暗殺計画と暗殺そのものは、イギリスの名誉革命、フランス革命という後の史実と重なりあいながら、いわば実体かされた表象と変じてゆくのであり、また晩年の作品に見られる「パ-ストラル」の要素は、その後、反近代という外延的表象を担わされる。(2)シェイクスピア当時はかなり文化的表象の鮮明であった概念である「古代ロ-マ」は、のちの受容において次第に一般的表象となるに至る。たとえば、「ロ-マ劇」の世界は、古代の異教世界という文化的に特殊な場における実験劇と言ってもよいものであったが、後の十九世紀になると、シェイクスピア崇拝がこうじて、一般的価値観を担わされた普遍劇として扱われるに至る。この表象における特殊ロ-マ性の崩壊は、「近代」内部における表象組織の組み替えに呼応する。(3)シェイクスピア作品の流布と受容にあたって、普及版テクストの創造ほど影響力を及ぼしたものはないが、なかでも十九世紀後半に編纂された「グロ-ブ版」のテクストとしての表象性は意義深い。その校訂の原則は、文化と時代を縦横に超越するもので、世界中どこでも、この定本たるテクストを持ち英語さえ読めれば、人類の共有財産であるシェイクスピアが読めるとする。ここでは、シェイクスピアそのものが強力な普遍性の表象と化してしまった。
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