研究課題/領域番号 |
02451063
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
その他外国語・外国文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川端 香男里 東京大学, 文学部, 教授 (50000592)
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研究分担者 |
三谷 恵子 東京大学, 文学部, 助手 (10229726)
金沢 美知子 放送大学, 助教授 (60143343)
栗原 成郎 東京大学, 文学部, 教授 (70012359)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1992
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キーワード | 農奴解放 / 社会的心性 / 「分厚い雑誌」 / 『現代人』 / 『祖国雑記』 / 民衆的言語表現 / 予言者としての作家 |
研究概要 |
『ロシア19世紀後期の文学に見る「社会的心性」の研究』というテーマで3年間にわたって行われた調査は、1861年の農奴解放前後をピークとするロシア社会の激変と、それに伴う社会的心性の変化を文学の側から記録し、従来の政治史・経済史中心の研究では得られなかった知見を獲得することを目的とした。ロシア帝国の「法」と市民的「自由」の対決する場であり、かつ社会生活の諸相を具体的に反映する雑誌ジャーナリズムの調査と、社会生活のすぐれた記録者であり時代の証人であった大作家たちの研究を主軸にすえ、当時の人々の精神のあり方をさぐることがわれわれの目的であった。 19世紀ロシアの主要な文学作品は、いきなり単行本で出版されることはほとんどなく、「分厚い雑誌」(トールストゥイエ・ジュルナールィ)と呼ばれる総合創誌に連載される形で発表されるのが道則であった。自由な政治組織のないロシアでは、文学は何らかの視野を新たらしく提供してくれるものと期待されていた。文学作品それ自体の自立的・美的価値よりも人々の関心は作品の中で作家が読者に発するメッセージに向けられた。作家は時代の証人であり、予言者であった。今回の調査の中心は、進変派の2誌『現代人』『祖国雑記』穏健派の『ロシアの言葉』である。が、ロシアの改革についての激しい論戦を見評的に知ることができた。 今回の研究で明かにされたこととして、男性優位の秩序が崩れ、家族が崩壊して行くプロセスを「文学」がきわめて的確に表現しているという事実がある。また言語の面で重要なのは、民衆的な言語表現の大文学への取り入れである。これはいわゆる「民芸」運動などとも通ずる側面をもち、プリミティヴィズムを先取りし、最終的にはアヴァンギャルドにつながることとなる。
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