研究概要 |
情報化の進展にともない,都市における情報ネットワ-クの利用は今後益々高度化することが予測される.今年度の研究では,都市内産業・就業構造が分化,変遷するなかでの,人的流動を支える交通ネットワ-クと高度情報通信ネットワ-クとの間の代替性(競合性)と補完性が都市システム,都市就業構造,労働環境,居住環境,交通混雑,余暇生活時間,地価の空間分布,所得(の空間的)分布に与える影響を分析するための非線形都市システムシミュレ-ションモデルとそのシミュレ-ションアルゴリズム,およびシミュレ-ション結果を分析するためのEWS上でのグラフィックソフトを開発した. 在宅勤務の賃金率は会社勤務の賃金率より当初は低いものと予想されるが,にもかかわらず情報インプットを利用する在宅勤務により,郊外居住者の通勤は減少する.また,フレックスタイム制の導入によっても通勤量は減少する.会社勤務に混雑税,在宅勤務に補助金を課すと,都市はコンパクトになり,都市全体の便益(都市住民の効用+企業利潤)は増加する.しかし,居住スペ-スはむしろ小さくなり,住環境は低下する.他方,余暇および貨幣所得は増加する.また,混雑税,補助金によって地価の空間的高低差は拡大する.これに対して,フレックスタイム制を導入すると,通勤量,通勤時間は減少し,地価は全体的に減少する.などの定性的結果が得られている. 次年度の課題としては,交通サ-ビスの価格,情報サ-ビスの価格の内生化,複数都市システムでの同様の解析を展開することである.
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