研究概要 |
日本的な系列取引の金融面への顕著な影響としてメイン・バンク制がある。その結果、日本企業の資金調達行動は借入れに大きく依存したものとなっている。この構造が、日本の金融政策のあり方にどのような影響を及ぼしているか分析した。 分析によれば、日本の金融政策の波及経路は通常の教科書的なメカニズムとはかなり異って、次の二つである。一つは、コ-ルレ-トの操作が、銀行の資金コストを、そして貸出コストを動かすというもの。今一つは銀行の企業向け貸出に直接働きかける窓口指導の存在である。 この二つのメカニズムの重要性は従来からも指摘されてきてはいたが、本研究では、最新の時系列戸析の手法を用いてこの点を示したこと、金融調節メカニズムが変わりつつあると考えられていた1980年代についても伝統的なメカニズムが基本的には作用していたと考えられる点を示したことなどに新しさがある。 また、短期の金融調節においては、コ-ルレ-トが主要な政策目標とするため、ハイ・パワ-ド・マネ-,マネ-・サプライのような通貨供給量は内生変数となることも示された。 この他、本年度はよりマフロ的な金融政策のあり方についても分析を進めた。重要な結果としては、政策に関する意思決定が、景気判断にかなり重点をおいてきたこと。従って景気に関する判断を誤った時に、金融政策自身も重大な誤ちを犯したこと。このような例として、1970年代初めと、1980年代後半における円高期があげられることなどである。 また、日本の金融政策の一つのル-ツとしての戦後初期のドッジライン期の分析も行った。
|