研究概要 |
本研究では、日本に広く見られる法人間の株式持合及びそれに関連した現象が、日本の金融市場・金融政策にどのような影響を与えているか分析した。 第一に、株式持合の株価への影響である。単純な理論によれば、持合は企業の株価収益率(PER)を高める効果がある。これは、保有株からの収益の一部が実現されないキャピタルゲインの形をとるため、会計上の収益をその分低くくするからである。ただし、株価の絶対水準への影響は、株式購入資金の調達方法に依存する。 第二に、株式持合のかなめは、メイン・バンクを中心とした系列の存在であり、また、このことは企業金融における銀行貸出の雷要性につながる。このような銀行貸出の広範な利用が、金融政策のあり方にどのような影響を与えているかを分析した。分析結果によれば、日本銀行はコ-ル・レ-トの操作、窓口指導の利用の双方を用いて金融調節で行ってきたといえる。この点は必ずしも新しい指適ではないが、最新の時系列分析の手法を用いて、厳密な論証を行った。 第三に、日本の金融システム全体の安定性・効率性の分析を進めた。日本,金融システムは明らかに安定しているが、効率性の観点からも国際比較によると、かなり高いパ-フォ-マンスを示している。例えば、銀行部門の貸出利子率と預金利率の差は、欧米に比べてかなり小さく、貯蓄資金の投資への配分が低コストで行われていることを意味する。この原因の一つが、系列企業間の円滑な情報の流れであり、また政策当問がそれを有効に利用してきた点にあると考えられる。ただし、これは新規参入者には障壁として働いている。
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