この研究でわかったことは、次の4つの論文にまとめられている。成果を簡単にまとめてみる。 「個人年金の需要分析と潜在的需要」では、有名なYarriの死亡確率の不確実と年金需要の分析を発展させて、資本市場が不完全な場合では、終身年金型でみられる給付形式が非効率をもたらす可能性のあることを示した。次に、この非効率性が、個人の時間選好率や死亡確率の変化によってどのような影響を受けるかを調べた。そして、この非効率性が個人年金市場の規模が引退期の必要生計費に比して不十分であることの理由になっていることを示した。最後に、年金の給付が個人の最適消費計画に応じて十分になされうるかを調べた。答えはその可能性を否定するものとなった。 「Behavior of the Aged under Uncertainty」では、死亡時期の不確実性ではなく、引退後の所得(すなわち年金給付額)の不確実性や、病気等の不時の支出が、高齢者の貯蓄行動にどのような効果があるかを調べた。そこでは個人のリスク回避度が重要な役割を演じていることが確認された。 「内部収益率からみた公的年金、個人年金、企業年金の評価」では、それぞれの年金の内部収益率を計算して、それぞれの制度のもっている効率性を吟味した。しかし効率性のみで年金制度を評価するのは一面的すぎると、この論文では主張されている。 「Lost of care Bequest」では、遺産動機が親の介護と交換で保持されることに注目して、その経済学的意義を明らかにした。遺産動機が利他的でない時との相違がもつ意味を考慮した。
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