本年度は、まず前年度の成果にしたがって、国土空間の新たな認識を可能とする都市間高速道路上の風景の調査を行なった。その結果、都市間高速道路の国土空間の認識構造上に与える影響は大別して、(1)都市間高速道路の整備によって新たな視点が生じること、(2)都市間高速道路であるがゆえに、高速走行できるため、より広域の空間を一体のものとして認識が可能なことの、2点であることがわかった。前年度の分析でえられた幹線道路上からの印象ぶかい風景としての幾つかのタイプの山について考えると、(1)に類するものとしては、通常名山といわれている山に対して新たな視点がうまれるとともに、その視点がより一般的なものとなり、一部の人にとっての名山ではなく、より広範囲の国民の共有できる名山となること、また地方で局所的な名山であった山が全国的な名山となることがあげられた。また(2)の観点にたつと今までは別々の存在としてのみ認識していた複数の山を一連の物として認識するようになったこともあげられる。また、必ずしも山の認識とはいえないが、(2)の観点に対応して、谷筋の認識、盆地の認識が強調されることもわかったが、この認識構造は江戸時代に描かれた絵地図などの認識と酷似していることがわかった。これらの結果をまとめ、国土空間の認識構造に影響を与えると思われる都市間高速道速上の景観について写真撮影の上整理を行なった。ただし、この整理については事例の整理による仮説的な認識構造にしたがって分類を行なっている。前述の空間認識構造を整理するため、江戸時代の絵地図及び絵画の分析も補完的におこなった結果、視点は地上に在るものの、優れた絵師による絵地図を見るとそれぞれの地上からの認識を統合することによって、いわば鳥瞰的な認識となっていることがわかった。この鳥瞰的な認識について検討するため、ハンググライダ-からの空間認識についても検討を行なった。
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