本年度実施した研究。1)高血圧遺伝子素因保有若年者を10日間無為臥床に暴露した際の血圧と心拍数の日内変動に関する研究。被験者は20ー24才の男女12人で、高血圧家族歴から素因無し群3人、2親等有り群5人、1親等有り群4人に分け、起床時から就寝時までの覚醒時血圧と心拍数を2時間毎に自動血圧計で測定し、高血圧境界値以上の血圧値の出現を記録した。その結果、境界値以上の血圧値を示す者は2親等群で1人、1親等群で3人、素因無し群では0人であった。特に、1親等群の2人は10日間の後半で頻繁に高い血圧値を記録した。高血圧遺伝素因保有若年者で現在正常血圧でも覚醒時に原因不明の高血圧値を不特定時に示す者がいることが示唆された。。2)高血圧遺伝素因保有若年者の運動中の血圧応答と圧受容積器反射の感受性との関係に関する研究。被験者は健常な男子30人で、内素因無し群8人、2親等有り群11人、1親等有り群11人であった。50wattsペダリング運動中の収縮期血圧の安静時値に対する増加率が平均値以上を示した者は1親等群55%、2親等群36%、素因無し群25%を占め遺伝子素因を有する者の方が高い傾向にあった。仰臥位安静状態の被験者に-40mmHgの下肢陰圧負荷を刺激した場合、収縮期血圧応答は1親等群、2親等群、遺伝素因無し群の順に高くなり、心肺圧受容器(低圧受容器)反射が遺伝素因と関係の有ることが示され、その血圧上昇に対する前腕血流量減少(血管反射)も認められた。しかし、-50mmHgの頸部陰圧負荷を刺激した場合、血圧応答、心拍数、前腕血流量の何れにも各群間の差異は無かった。以上のことから、高血圧遺伝素因保有若年者は素因無しの者より軽度運動中高い血圧反応を示し、心肺圧(低圧)受容器の交感神経抑制調節が強い。しかし、頸動脈洞圧(高圧)受容器の調節に差を認めない等の傾向が有ることが明かとなった。
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