研究概要 |
本研究の主要な目的は、異なる文化は、その文化の中で育つこどもに、異なる感性と認知を育むであろうという仮説を、検証するために計画された。日本とフランスの小学3、5年生と中学1年生、合計744名のこどもが、様々な空間図形・対象物に対して(1)好感度:F、(2)美感度:B、(3)風変わり度:S、(4)落ち着き度:Cを評定した。 この調査での主要な結果の一部は以下のとおりである。F,C,Sに関して、日本のこどもは、同じ様な図形・対象物を好む傾向がある。また単純、まろやか、均整のとれた図形もF,B,Cにおいて、多く選んでいる。一方フランスのこどもは、複雑、不規則な図形を好み、それに美を感じ、また落ち着きを見いだす割合が高い。日本のこどもの感性は、小学校から中学校にかけて、急激に変化する。フランスでは、小学3から5年にかけて、変化するものが多い。フランスのこどものF,B,S,Cの4つの尺度間の連関は、日本のこどもに比べて、ずっと高い。このことは、日本のこどもの4つの感性が、フランスのこどもに比べて、それぞれ独立していると解釈できるが、フランスのこどもの感性には、4つの感性を束ねるようなさらに高次の何かがあるとの解釈もできる。 4つの立方体の見取り図が与えられ、立方体を表す見取図として、どれを使いたいかという課題では、日本では、ほとんどのこどもが教科書に載った見取図を選んだ。一方フランスでは、選択が一つの見取図に偏らずに、他の見取図もたくさん選ばれた。なぜ両国でこのような違いがみられるのかについては、はっきりとした結論はだせないが、日本のこどもは美感度で水平線を選び、かつ調和的な図形が好きであり、美を感じ、さらに落ち着きを感じるということと、強い関係にあるであろうと推察された。
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