本研究の目的は(La_<1-x>Ba_x)_2CuO_4系における正方晶-斜方晶、斜方晶-(低温)正方晶転移と超伝導との関連性を明らかにし、ペアリング機関に関する知見を得ようとするものである。後者の構造相転移と超伝導との関係については、現在までに、この構造相転移に伴うフエルミ準位での状態密度N(0)の減少が超伝導を抑制することを明らかにした。相転移に伴ってN(0)が減少することは、この構造相転移には電荷密度波の形成が伴っていることを意味していると思われる。また、高圧下でのTcのBa濃度依存性から低温-正方晶への転移機構は6.25%Baのところで特に強いこと、さらに、この濃度以上では試料そのものが不安定となること等が明らかとなってきた。6.25%という濃度は16個のLaのうち1個をBaで置き換えたときの濃度に相当し、このようなLaとBaが特定の整数比となる試料で転移機構が強くなっていることは、この構造相転移の機構を明らかにする上で重要な手がかりを与えてくれると考えられる。現在、6.25%付近の試料について回折実験を行い、LaをBaで置換していくときBa原子が結晶中にどのように入っていくかを調べている。一方、正方晶-斜方晶転移と超伝導との関連性を調べるため、28Kbarの圧力を加えて正方晶相を低温まで安定化させ、Tcの圧力依存性を測定した。その結果、正方晶相でのTcの圧力係数が斜方晶相での値よりかなり小さくなっているが分かった。この結果は、正方晶相に比べ斜方晶相では超伝導が抑制されていることを意味しており、今後、正方晶-斜方晶転移に伴って生ずる物理量の変化とTcの関係を詳細に調べることで、超伝導のペアリング機構に関する重要な知見が得られるものと期待できる。
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