研究概要 |
本研究はLa_<2-x>M_xCuO_4(M=Ba,Sr)系における超伝導と正方晶-針方晶転移および斜方晶-低温斜方晶転移との関連性を明らかにすることを目的としている。これまでに、La-Ba(M=Ba)系における後者の構造相転移に伴ってフェルミ準位での状態密度N(O)が減少するため、超伝導転移温度Tcが大きく低下することを明かにしてきた。本研究では、始めに低温X線回折実験から、N(O)の減少は構造相転移によりCu-O面内の酸素が二つの非等価なサイトに分かれることに関係することを指摘した。その後、熱膨張率の測定から高圧下での構造相転移の様子を詳細に調べ、x=0.125のごく近傍を除き、構造相転移と超伝導が競合していることを確認した。一方、x=0.125の試料では2GPaの高圧によって構造相転移を完全に抑制しても、Tcは10K程度までしか回復しないことが明らかとなった。このことは、x〜0.125の試料では構造相転移以外にも超伝導を抑制する機構が存在することを意味する。そこで、高圧下での電気抵抗の温度依存性を詳しく測定したところ、x=0.125の試料に限って電子系に強い散乱が働いていることが分かった。その具体的散乱機構を明かにすることが今後の課題となっている。 一方、La-Sr系の正方晶-斜方晶転移を熱膨張率から調べた結果、ある臨界圧力Pc以上で正方晶相が低温まで安定化することが分かった。この高圧下の正方晶相でもバルクの超伝導が見られること、また、常圧の正方晶相(x>0.2)の超伝導はギャップレスとなっているがバルク的であることを確認した。さらに、高圧下でのTcの圧力依存性を精密に測定し、Pc以下の圧力下では構造相転移温度が減少するにしたがってTcは増加するが、斜方晶相が消失し正方晶相となると(P≧Pc)その圧力係数が非常に小さくなることを見つけた。この結果から、斜方晶相では酸素八面体が傾くことによって超伝導が抑制されることを始めて明らかにした。
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