研究概要 |
可変温度クライオスタット(OXFORD社)とゲ-テドホトンカウンタ-(STANFORD RESEARCH SYSTEMS社)を購入、既設装置との併用により、微弱蛍光の減衰波形の高感度検出と時間分解蛍光スペクトルの測定を3Kから室温にわたる任意温度で行った。緩和励起子(STE)の安定構造に関して得られた結果を纏めると以下のようになる。 (1)アルカリハライドの固有発光(σ、π)やハロゲン不純物による緩和発光は、三種の型(I,II,III)に分類出来る。これはアルカリとハロゲンのイオンサイズ比と関係しており、物質に依存して、三通りの異なる格子緩和配置が存在するためである。その構造モデルとして、オン・センタ-(I型)、弱いオフ・センタ-(II型)、強いオフ・センタ-(III型)の三つの配置を想定することが出来る。 (2)π発光は、同じハロゲン種の物質間でも、それが三種の型のいずれであるかにより、発光寿命やその温度変化の様子に系統的な変化が存在する。これは、輻射遷移確率や零磁場分裂幅が電子と正孔の重なりと関係しており、従って、三重項STEの緩和形態の違いに応じて敏感に変化するためである。 (3)I〜IIIの発光帯が同じハロゲン核種の祐和励起子について観測されているNaBr:I,KBr:I,RbBr:Iの三つの系([Brl-+e]異核型励起子)について、三重項発光寿命の温度変化と磁場変化を測定し、輻射遷移確率、零磁場分裂幅、占有数の初期流入比、電子・正孔の交換エネルギ-、等を決定し、オフ・センタ-変位との相関を考察した。 (4)KBrとRblについて、従来は励起一重項STE状態からの純粋許容遷移と考えられていた「σ発光」に、長寿命の燐光成分が付随していることを見出した。この成分はI型配置(オン・センタ-)に緩和した最低三重項STEからの部分許容遷移と同定出来る。
|