研究概要 |
申請者らはラ-ベス相金属間化合物YMn_2が複雑なスピン変調を示す反強磁性体であり,Yを小量のScで置換することにより反強磁性が消失し極低温においても巨大なスピンの揺らぎが存在すること,またそのため電子比熱が強くエンハンスされることを示してきた。 本研究は,C15構造においてMnの副格子が,最近接相互作用(負)のみを考えると,基底状態がスピン配列に対し無限個の縮退を持つ完全フラストレ-ト系であることに着目し,この系の基底状態の性質,およびこのような系では特に著しいと考えられる非磁性不純物効果を巨視的,微視的両観点から調べ,YMn_2系の巨大なスピンの揺らぎの起因を明らかにしようとするものである。昨年度の研究により,Y(Sc)Mn_2は磁気相互作用のフラストレ-ション効果により基底状態がスピン液体状態になっており,そのため巨大比熱等の異常が説明できることを明らかにした。本年度は,やはり磁気的フラストレ-ションがあるβーMnについて不純物効果等YMn_2系と同様の測定を行い以下のような結果を得た。 1.βーMn_<1ーx>Al_x試料の作成と磁化,比熱,電気抵抗の測定。 磁化測定によりこの系がAlの置換によりスピングラス状態に転移することを見いだした。低温比熱の測定によりスピングラスになるにともない電子比熱係数が急激に減少することを見いだした。さらに電気抵抗の温度変化の測定からAlの置換によりMnモ-メントが局在化することを明らかにした。以上の結果は、Y(Sc)Mn_2系同様磁気的フラストレションの結果生じたスピン液体状態が不純物効果により局在モ-メント型スピングラスに転移するというモデルで説明出来ることを示した。 2.コヒ-レント スピンエコ-NMR装置の改良。 上記のモデルを検証するため,これらの系のスピンの揺らぎの動的性質を測定する目的で,昨年度組み上げたコヒ-レント スピンエコ-NMR装置を改良し緩和時間を精度よく測定できるようにした。
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