研究概要 |
本年度の研究は有機物伝導体のうち、これまでに知られているもののうちからKー(BEDTーTTF)_2Cu(NCS)_2について行った。また新たに発見された物質の中から陰イオンにHg(SCN)_4を含むもの,Ag(SCN)_2を含むものについて研究した。 1)Kー(BEDTーTTF)_2Cu(NCS)_2系 EXAFSの手法を用いて、Cuイオンのまわりの局所的構造を調べた。この結果、伝導性、ホ-ル効果などの報告に対応する構造の微妙な温度変化を見出した。また圧力下でのシュブニコフドハ-ス振動の結果を解析し、構造が本来もっている長周期的な超格子構造が強調されてあらわれてくることを明らかにした。これらの結果は本研究の大きな目標である、サイクロトロン共鳴観測のために必要な予備研究ともなっている。 2)(BEDTーTTF)_2X・Hg(SCN)_4(X=K,NH_4,Rb etc)系 この系は、低温まで金属的であることを、我々が最初に見出した。その後超伝導性を持つ場合(X=NH_4)が発見されている。この系についてシュブニコフドハ-ス効果を観測し、そのフェルミ面の形を確定した。特に量子振動の明白な角度依存性を発見している。 3)Kー(BEDTーTTF)_2Ag(CN)_2・H_2O系 この系は、最近見出された有機物超伝導体である(Tc=5K)。この系のフェルミ面をドハ-ス・ファンアルフェン効果で研究し、そのフェルミ面がKー(BEDTーTTF)_2Cu(NCS)_2で知られているものと同じであることを、明らかにした。ただし二次元的な系として、面問の相互作用がより大きいことがわかった。これは、有機物超伝導体の超伝導転移点を決めるメカニズムを理解するうえで、重要な情報である。 以上の物質についての高周波伝導特性の研究が準備中であり、特に強磁場中での興味深い結果が期待される。
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