研究概要 |
本研究は、光電子分光とは対照的に空準位について詳細な情報を与える逆光電子分光を用いてCd_<1-x>Mn_xY(Y=S,Se,Te)の空準位の電子状態を決定し、これまでに得てきた被占有準位の電子状態とあわせて電子構造の全容を明かにしようとするものである。 逆光電子分光では、通常数μA〜数10μAの電子線を試料に入射し、放出される光を検出する。一方、試料であるCd_<1-x>Mn_xY(Y=S,Se,Te)の抵抗値は通常100MΩ程度と高い。このために帯電効果が発生しスペクトル測定が困難となる。 この問題を解決するために、平成2年度に(1)メタリックな基板(例えばGaAs単結晶)上に数100Aの薄膜単結晶を成長させ、しかもその後その試料を別の超高真空解析槽に移す事が出来るホットウォール炉を設計・製作した。(2)ホットウォール炉を収納する超高真空仕様の真空槽を製作し、逆光電子分光実験用の試料準備槽としての機能を発揮させた。 平成3年度には(1)種々の条件下で数100Aの膜厚のCd_<1-x>Mn_xTe系単結晶を作成した。結晶成長のための最適条件を見いだす作業も行った。(2)逆光電子分光装置に接続しCd_<1-x>Mn_xTe系単結晶の逆光電子スペクトルの測定に成功した。 平成4年度には、(1)Cd_<1-x>Mn_xTeの逆光電子スペクトルのMn濃度依存性の系統的な測定・解析を行った。(2)従来の価電子帯光電子スペクトルとあわせCd_<1-x>Mn_xTeの電子帯構造の全体象の議論が出きるようになった。これにより、Mn 3d spin-exchange splitting energy(7.1±0.2eV)をはじめて正確に見積もる事もできるようになり、研究の目的の重要部分を達成する事ができた。 今後Cd_<1-x>Mn_xteに関する成果を、Cd_<1-x>Mn_xY(Y=S,Se,Te)に拡張し半磁性半導体の電子物性の理解を大きく前進させてゆく予定である。
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