研究概要 |
代表的な液体半導体として知られる液体セレンの,液体・気体臨界点(1580℃,380気圧)近傍に出現する半導体ー金属転移のメカニズムを明らかにするため、新しく開発した高圧容器およびサファイア試料容器を用いて1700℃,1500気圧までの温度圧力範囲で,エネルギ-分散型X線回析測定を試みた。研究計画は,以下のように順調に進んでいる。 1.サファイア試料容器の製作;1700℃もの高温に耐え,セレンとの反応性が無く、しかも加工性に富む容器材料として単結晶サファイアを用いた。X線が透過する部分はできる限り薄くする必要があり,しかも臨界温度圧力下にある試料を安定に保持し得る堅固さが要求される。ダイアモンド工具を用い,X線透過部分の厚さが150ミクロンのX線回析測定用試料容器を製作することができた。 2.高圧容器の製作;1700℃,1500気圧までの高温高圧下でX線回析測定が可能な高張力鋼製の内熱型高圧容器に設計し製作した。ヒ-タ-,断熱管等の内臓物を自作し,X線を透過させる高圧窓として金属ベリリウムを使用し,また圧力媒体としてベリウムガスを用いた。テストの結果、所定の高温高圧を達成できることが判明した。 3.X線回析装置の調整;SSDX線回析ゴニオメ-タの据えつけ・調整を終え,高圧容器をゴニオ台上にセットし,タングステン管球から出る白色X線ビ-ムの透過テストを行った。計画通りのX線の透過を確認した。 4.流体セレンのX線回析測定;1500℃,815気圧までの温度圧力範囲でX線回析測定に成功し、流体セレンの干渉関数を散乱ベクトルの大きさが、1.5〜13A^<-1>の範囲で得ることができた。これをフ-リエ変換して得た動径分布関数の解析により,光学ギャップが閉じ金属化が進んだ領域でも依然として二配位構造が残っているという興味深い結果が得られた。
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