研究概要 |
セレンの液体・気体臨界点(臨界温度圧力;1590℃,380bar)近傍で起る半導体ー金属転移のメカニズムを明らかにするため、1500℃,815barまでの超臨界領域に至る広い温度圧力範囲でX線回折測定を行った。このため我々は,独自の高圧容器およびサファイア製の試料容器を開発し、これらとエネルギ-分散型のX線回折測定法を組み合せることにより、これまで測定が不可能であった超臨界領域でのセレンの原子配列に関する知見を得ることに初めて成功した。 流体セレンの干渉関数および二体分布関数を、温度圧力の関数として得、これを解析することにより、原子配列に関する主要なパラメ-タである最近接原子間距離および配位数の温度圧力変化を知ることができた。その結果、光学ギャップが閉じ金属化が相当に進んだ領域においても、二配位構造が依然として保たれていることが判明した。このことは,これまでの転移のメカニズムに対する考え方、すなわち、半導体ー金属転移が二配位から三配位構造への構造変化によって起るという従来の考え方に修正を迫るものである。我々の得た実験結果を基本に据えることによって、セレンの臨界点近傍で起る半導体ー金属転移は、平面ジグザグ構造をもつ短い鎖状クラスタ-が出現することによって生じた可能性が高いことが示唆される。 さらに、我々が開発したX線回折の手法は,臨界温度圧力が非常に高いため測定が不可能とされここ約20年間未解決のままであった流体水銀の構造解析に適用することができ、密度を13.55から6.8g/cm^3まで、体積にして約2倍膨張させた流体水銀の構造を世界で初めて明らかにすることができた。
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