研究概要 |
1.層状沃化物結晶として、Bil_3,Sbl_3,Pbl_2などの良好な単結晶試料が育成出来た。 2.結晶試料の基礎光スペクトルを系統的に測定し、良質な試料の選別、質の異なる試料の分類を行った。 3.本年度の主課題である、Bil_3結晶の光学的シュタルク効果の測定で得られた結果の概略は次の様である。 (1),Bil_3結晶の積層欠陥に局在した擬二次元励起子について、窒素レ-ザ-励起色素レ-ザ-によるpump and probe法でスペクトル変化を調べ、励起子遷移域でシュタルクシフトの共鳴増強が系統的に観測された。これを、“dressed exciton"モデルで解析し、実験結果を良く説明できた。この解析より、この励起子系の電気双極子行列要素の値が非常に大きいことが見積られ、これがこの系の大きな光学非線形性を与えることが分かった。 (2),申請機器のストリ-クカメラを用い、(1)と同じ系でサブナノ秒域のシュタルクシフトの時間応答を測定し、励起光に追随するシュタルク成分と、実励起で出来た励起子成分による遅いスペクトル変化が分離・解析出来た。この過程で、固体系では初めて、低エネルギ-側へのシュタルクシフトが、時間分解されて観測出来た。 (3),低次元閉じ込め励起子の一つとして、Bil_3結晶中に、外因的に誘起される歪みで発生した新しい対称性を持つ結晶domainに閉じ込められる励起子遷移を調べた。この遷移に対しては、量子ディスクモデルを用いて光学的シュタルク効果が解析でき、積層欠陥励起子系と同程度以上の大きな非線形電気感受率が見積られた。 4.Bil_3励起子系の緩和のダイナミクスを調べ、各緩和時定数が明らかになった。特に、超高速位相緩和情報を与える、縮退四光波混合法による予備的測定を開始し、Bil_3積層欠陥励起子系で、非常に長い位相緩和時定数が見積られ、この系が大きな非線形性を与える一要因が明らかになった。
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