層状結晶中で低次元閉じ込めを受けた励起子の光学的シュタルク効果と、光学非線形性

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02452043
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 唐沢 力 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (90106336)
• 研究分担者: 飯田 武 大阪市立大学, 理学部, 教授 (80047191) ; 赤井 一郎 大阪市立大学, 理学部, 助手 (20212392) ; 小松 晃雄 大阪市立大学, 理学部, 助教授 (90047134)
• キーワード: 層状結晶 / 沃化ビスマス / 積層欠陥励起子 / 光学的シュタルク効果 / 非線形電気感受率 / 量子閉じ込め効果 / 縮退四光波混合 / 位相緩和

研究概要

1.昨年度に引き続き、層状沃化物結晶Bil_3の良好な試料の基礎光スペクトルを系統的に測定し、二次元構造を持つ積層欠陥界面での励起子遷移を示すサンプルの選別、分類を行った。
2.本年度は、BiI_3結晶の励起子糸が示す光学非線形性を、主にYAGレ-ザ-励起色素レ-ザ-を励起光源とし、申請機器のデジタルロックインアンプを信号検出に用いて調べた。得られた主な結果は次の様である。
(1)BiI_3結晶の積層欠陥に局在した擬二次元励起子について、ピコ秒色素レ-ザ-光を励起とprobeに用いるpump and probe法でスペクトル変化を調べた。前年度ナノ秒レ-ザ-励起で定性的に分離された励起光電場によるシュタルクシフトと実励起された高密度励起子によるスペクトル変化が、ピコ秒時間域で明瞭に観測された。励起光電場によるシュタルクシフトは、励起レ-ザ-強度の時間変化(パルス幅〜2ピコ秒)に完全に追随する超高速応答を示した。
(2)BiI_3積層欠陥励起子系の緩和ダイナミクスを、2ビ-ムおよび3ビ-ム方式の時間分解縮退四光波混合法により系統的に調べた。2ビ-ム方式では、四光波混合信号の温度依存性を測定し、この系の位相緩和時間を支配する機構がバンド内容響フォノン散乱であることが分かった。さらに、3ビ-ム方式の測定から分布緩和時間も明らかになり、積層欠陥励起子系全体を支配する緩和機構の大筋が明らかになった。
(3)BiI_3積層欠陥励起子系を高密度に励起した時の発光スペクトルと、縮退四光波混合信号の励起スペクトルの測定により、新たに励起子生成の可能性を調べた。予備的結果は、この擬二次元励起子系で、励起子分子が安定に存在することを示した。

研究成果

• [文献書誌] I.Akai,K.Nakajima,T.Karasawa,M.Ichida and T.Komatsu: "PICOSECOND TIME RESOLVED SPECTRA OF THE OPTICAL STARK EFFECTS ON THE STACKING FAULT EXCITONS IN BiI_3 CRYSTALS" Mol.Cryst.and Liq.Cryst.(1992)
• [文献書誌] M.Ichida,T.Kawai,T.Karasawa and T.Komatsu: "DEPHASING AND RELAXATION PROCESSES ON THE STACKING FAULT EXCITON IN BiI_3 UNDER HIGH DENSITY EXCITATION" Mol.Cryst.and Liq.Cryst.(1992)
• [文献書誌] M.Ichida,T.Karasawa and T.Komatsu: "DEPHASING PROCESSES ON THE STACKING FAULT EXCITONS IN BiI_3" Phys.Rev.B.
• [文献書誌] T.Iida,and Y.Hasegawa: "A POSSIBILITY OF BISTABLE STATES IN OPTICALLY HIGHLY EXCITED SEMICONDUCTORS" J.Phys.:Condens.Matter.
• [文献書誌] T.Iida,and Y.Hasegawa: "EXCITONIC EFFECTS ON THE LIGHT PROPAGATION IN A WAVEGUIDE WITH A QUANTUM WELL A OUANTUM WELL" J.Phys.:Condens.Matter.
• [文献書誌] "EXCITONS LOCALIZED IN MESOSCOPIC DOMAINS PRODUCED BY STACKING FAULT IN BiI_3" Mol.Cryst.and Liq.Cryst.(1992)