研究概要 |
フラクタル構造の中でも特にパ-コレ-ション・ネット(浸透網)は、格子上に確率pで粒子を置き、隣合う粒子間をボンドで結合するという極めて単純な作業により作られる。アモルファス材料やシリカ・エアロゲル、高分子架橋体等の現実に存在する多くのランダム構造を持つ物質は、あるスケ-ルで自己相似性を持っており、パ-コレ-ション・モデルでよく記述される。パ-コレ-ション・ネットの動的性質の研究から、フラクタル系一般に新しいたタイプの局在励起が存在することが明かとなった。この励起状態はトポロジカルに乱れた構造の動力学に対し極めて重要な役割を担う。 光または中性子の非弾性散乱実験により直接得られる励起状態に関する物理量は、動的構造因子S(q,ω)(q,ωは各々波数シフトと振動数シフト)である。動的構造因子は質量密度の振動励起による変化成分の相関関数のフ-リエ変換であり、この関数の波数または振動数依存性を調べることで励起状態の特性を知ることができる。我々は700×700の正方格子上に臨界濃度のパ-コレ-ション・ネットを作り、その上に多数のフラクトンを励起させS(q,ω)を直接計算した。動的構造因子の波数依存性はピ-ク値のqより下ではq^<2.7>、それより上ではq^<-2.7>の依存性を持ち、平均波動関数を用いた計算や有効媒質近似による結果とは異なる結果を得た。この事は、従来の近似方法がフラクトン波動関数の持つ特徴を十分に捕らえていないことを物語っている。次年度の計画ではS(q,ω)のω依存性やパ-コレ-ション濃度pに対する依存性、次元依存性を大規模シミュレ-ションにより明らかにする計画である。さらにこれらの結果からフラクトン・モ-ドの有効波動関数を求める。これによりフラクトンと他の素励起との相互作用を理論的に計算することが可能となり、フラクトンが関与する様々な物理現象を議論することができるようになる。
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