統計平均的な意味でフラクタル性を有するパ-コレ-ション系は、アモルファス材料、ゲル、磁性合金、半導体の不純物伝導など多くの異なる対象に対して適用できる基本的な模型である。フラクトンと呼ばれるこの系特有の局在振動励起は、ランダムな系の動的性質を理解する上できわめて重要であり、多くの研究が行われている。しかし、フラクトンに関する理論的研究のほとんどがスカラ-変位のフラクトンを扱っており、実際上重要なベクトル変位のフラクトンの性質は殆どわかっていなかった。本研究では、ス-パ-コンピュ-タおよび我々が開発した並列計算向きアルゴリズムを用いて10^6個のサイト数を有する巨大パ-コレ-ション系のシミュレ-ションを行なった。最初に2次元および3次元規則格子上にサイト数が10^6を越える巨大パ-コレ-ション・クラスタ-をモンテ・カルロ法を用いて作った。次に周期的外力による共鳴を利用した並列計算向きアルゴリズムを用い、これによりベクトル変位を持つパ-コレ-ション・クラスタ-の振動状態密度および、モ-ド・パタ-ンをス-パ-コンピュ-タで数値計算した。これにより、現実の物質内で励起されるベクトル・フラクトンの状態密度およびモ-ド・パタ-ンを計算し、ユニバ-サリティ-・クラス、局在性など、スカラ-・フラクトンとの差異を明確にすることができた。すなわちベクトル・フラクトンの状態密度及びモ-ド・パタ-ンがスカラ-・フラクトンのものとどの様に異なるかを明らかにし、実験と比較することができた。さらに計算されたモ-ド・パタ-ンから直接動的構造因子を求め、実験的に得られるフラクトン励起の特性を計算機上で明らかにした。
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