本研究では対流点近傍に見られる非線形パタ-ンダイヤグラムを二次元フ-リェ変換を使って不安定モ-ドを追跡することにより詳しく求めた。それによると直線ロ-ル対流に対する中立安定曲線、エクハス不安定曲線、ジグザグ不安定曲線、スキュドバリコ-ス不安定曲線が存在する事が分かり、その境界が決定された。この結果、ジグザグ不安定境界は最適波数線に対して非対称となっていることが分かった。これはまだ理論的には確立されておらず、今後の理論的発展が要求される。またパタ-ンダイナミックスの一次元挙動はTDGL(時間に依存したギンツブルグ-ランダウ)方程式を使った計算機実験と細いチャンネル型一次元セルを使ったEHD実験の双方で研究され、特異点の振幅の大きさ・幅、位相変化量さらにその時間変化に関して理論解析とのよい一致が得られた。パタ-ン選択のダイナミックスがよく理解された。これらの結果から欠陥乱流の発生にはジグザグ不安定性が重要であることが判明し、欠陥乱流への遷移過程が明白に三つのル-ト、1)安定垂直ロ-ル→ジグザグパタ-ン→欠陥乱流、2)安定垂直ロ-ル→欠陥乱流、3)安定垂直ロ-ル→欠陥周期秩序→欠陥乱流、に分けられることが分かった。 乱流1ー乱流2転移では転移に際してヒステリシスはなく、また緩和時間の発散も観測されない。これは転移が不完全熊手分岐型であることを示している。また過渡過程における確率密度分布に二つのピ-クが観測された。これは過渡双安定性と呼ばれる特異な現象で、空間自由度を持った系で初めて観測された現象である。この結果、内在したランダム性による対称性の破れがこの転移の主役であり、乱流1(DSM1)の内部流がつくり出すランダム性と系の決定論的な分岐現象との間の関連とつながりの研究が乱流ー乱流転移を理解するのに必要であることが分かった。
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