1)中性子磁気複屈折現象の確認 シリコンの完全結晶で作られた中性子干渉計に磁性体を挿入して、アルミニウムの位相物体を回転させて透過波と回折波の強度変化を測定した。干渉計の結晶面と磁性体のなす角度を変化させていくと、ある角度で磁化に平行なスピンの中性子と反平行なスピンの中性子の干渉パタンが打ち消しあって出射ビ-ムの強度が振動しなくなった。これは磁気複屈折現象が起こっている直接的な証拠である。 またこのときのデ-タを解析して、中性子の磁性体に対する核散乱振幅と磁気前方散乱振幅を求めた。得られた結果は理論値とよく一致している。 2)中性子の偏極度の測定 1)で振動曲線の振幅がほぼ0になるところでは、中性子線の強度は変化しないが、偏極度はアルミニウムの回転につれて変化することが予想される。そこで偏極アナライザ-機能を持つホイスラ-合金結晶で透過波を回折させてからその強度を測定した。そして回折波の強度は全く振動していないのに対してホイスラ-合金で回折された透過波の強度は明らかに振動しているという結果を得た。この効果を利用すれば新しい偏極中性子発生装置が作れる可能性がある。 3)鉄ー3%珪素結晶を用いた実験 3)ー(a)中性子トポグラフによる磁区の観察 鉄ー3%珪素結晶の(220)反射を用いて中性子のトポグラフ写真を撮影した。トポグラフ写真には、磁壁部分が強い回折強度を与える白い線として、明瞭に記録された。 3)ー(b)鉄ー3%珪素結晶による磁気複屈折 鉄ー3%珪素結晶を用いて1)と同様の測定をした。測定結果を解析することによって、鉄ー3%珪素の核散乱振幅と前方磁気散乱振幅を同時に求めることに成功した。またこれらの値が、他の方法で求められた値とよく一致することも確認した。このことは3)ー(a)で観察された磁区の磁化がほぼ完全に飽和していることを示している。
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