研究概要 |
1.温度300℃,封圧3GPaまでのカコウ岩の破壊実験後の回収試料の顕微鏡観察から、温度が上昇しても圧縮強度と摩擦強度が等しくなると破壊機構が変化することが確かめられた。すなわち,圧縮強度が摩擦強度より大きい場合の低圧型破壊では開口型(モードI)クラックの合体と崩壊が主な役割を演じているが,両者が等しくなるときの高圧型破壊では面内剪断型(モードII)クラックの進展が支配的であることが明かになった。これにより,間隙水圧が非常に高い場合を除いては,高圧型の破壊が地殻でのものであるという考えが一歩進められた。これらの実験結果と岩石の強度の寸法効果の推定から,浅部の摩擦強度で表される脆性領域と深部の羃乗則クリープで表される延性領域の中間に高圧型破壊領域が存在する新しいリソスフェア強度のモデルが提唱された。 2.カコウ岩の実験中に問題が残っていた低圧型破壊の強度にを解決するため,低圧型破壊が起こる領域の広いエクロジァイトを用いた実験が行われた。予想に反して,この問題を解決することにはならなかった。用いたエクロジァイトは,温度250℃,封圧500MPaで延性化したが,それより高い封圧下では再び脆性化することが見いだされた。これにより,この実験の初期の目的は達成できず別の研究が必要になったが,高圧再脆性化は,カタクラスティック延性に固有の現象であり,構成粒子の硬さに依存する,という新しい知見が得られた。 3.高温での封圧下の破壊直前の高精度の弾性波速度の測定を行うために開発された,低摩擦ピストンを用いた実験により,最終破壊直前には段階的に応力降下が起こっていることが見いだされた。弾性波トモグラフィーによる解析から,これは破壊核内でのクラックの合体などの核の内部構造の変化に対応すると解釈された。これにより,新しい地震の震源核形成過程が考えられようとしている。
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