研究概要 |
現実の地表面は複雑で多様な地物が混在している.そのような地表面の複雑多様性は,大気ー地表面間のエネルギ-交換に大きな影響を与えている.本研究の目的は,複雑多様地表面がエネルギ-交換過程に及ぼす効果や裸地面蒸発量と表層土壌水分量の関係,多様地表面の土壌水分分布がエネルギ-交換に及ぼす効果などを,観測およびデ-タ解析,数値モデルなどによって明らかにし,それらのパラメ-タ化をおこなうことである.本年度の研究成果は以下のとおりである. <1.大気混合層および夜間冷気層発達の熱収支観測>___ー ラジオゾンデなどを用いて,盆地および海岸部における弱風晴天日の大気境界層の日変化を観測し,日中の混合層発達および夜間の冷気層形成に地形起伏が重要な効果を持つことを定量的に明らかにした.また地形起伏や地表面の多様性が原因で生じる熱的局地循環が大気ー地表面間のエネルギ-交換をより活発にしていることも明らかになった. <2.広域的な熱収支の評価>___ー ル-チン観測デ-タを利用して広域の大気ー地表面熱交換量を評価する新しい方法を開発し,その方法を用いて東北地方から中部地方までの広範囲における弱風晴天日の日中の熱交換量を評価した.その結果,森林面積の占める割合が小さい関東地方で,他の地域に比較して潜熱が小さく顕熱が大きいことがわかった.これら解析結果をもとに地表面の蒸発効率βを評価したところ,解析領域全平均でβ=0.29という結果が得られた. <3.裸地面蒸発量と土壌水分との関係>___ー この数十年間,裸地面蒸発量と表層土壌水分量との関係は不確かなままであった.本研究では裸地面蒸発のモデル化とその検証実験をおこない,世界ではじめて裸地面蒸発の正確なパラメ-タ化を完成させた.
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