研究概要 |
現実の地表面は複雑で多様な地物が混存している。そのような地表面の複雑多様性は,大気一地面間のエネルギ-交換に大きな影響を与えている。本研究の目的は,複雑多様地表面がエネルギ-交換過程に及ぼす効果や種々の地表面の熱収支的な特性を,観測およびデ-タ解析,数値モデルなどによって明らかにし,それらのパラメ-タ化をおこなうことである。本年度の研究成果は以下のとおりである。 1.複雑多様地表面上の熱収支を計算するために必要な地域代表風速を実測風速から評価する方法を開発した。 2.全国のアメダス観測点における風向別の地表面粗度を土地利用デ-タ(国土数値情報)より評価した。これら地表面粗度のデ-タは複雑多様地表面の熱収支解析や,顕熱,潜熱交換のパラメ-タ化のために使用できる。 3.不安定な大気境界層における強風の特性を,複雑多様地表面上のエネルギ-交換過程の立場から解析した。 4.山地積雪域の熱収支評価の基礎として,只見川上流域における融雪量を熱収支法によって計算し,ダム流入の実測地と比較した。その結果,実測値と計算値は20%以内の精度で一致した。計算値に誤差が生じる原因は主として気象要素の流域平均値の推定誤差によるものであり,特に放射量の推定が重要であることがわかった。 5.積雪域の熱収支に及ぼす森林の影響を融雪モデルと2層キャノピ-モデルを用いて調べた。その結果,ある程度の密度を持った森林の場合,その影響は無視できなくなることがわかった。この場合,日中の上向き顕熱輸送量は200〜300W/m^2となり,地表面の放射温度も5〜10℃に達する。
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